生活習慣病とは
高血圧症、脂質異常症(高脂血症)、糖尿病、高尿酸血症(痛風)といった生活習慣病は、動脈硬化を進行させて突然の脳梗塞や心筋梗塞などを起こす原因になります。生活習慣病や動脈硬化は自覚症状なく進行してしまうので、適切な治療をできるだけ早くはじめることが重要です。また、生活習慣病が複数あって肥満しているメタボリックシンドロームの場合、検査の数値がそれほど悪くなくても動脈硬化が進行しやすいため注意が必要です。
生活習慣病はその名称の通り、脂質・糖質の過剰摂取、運動不足、喫煙、飲酒などの生活習慣によって発症します。逆に生活習慣を改善することで生活習慣病はコントロールが可能で、それによって動脈効果の進行も防ぐことができます。ただし生活習慣病は完治する病気ではなく、コントロールを続ける必要があります。地道に継続することが重要ですので、無理をせずに治療を続けていきましょう。
糖尿病
血液中のブドウ糖が過剰な高血糖の状態になり、血管に大きな負担をかけ続けてしまう病気です。脳梗塞や心筋梗塞など重大な疾患の原因となる動脈硬化リスクが高くなるだけでなく、毛細血管にも大きなダメージを与えて深刻な合併症を起こし、失明、腎不全による人工透析、壊疽による足の切断などにつながることも珍しくありません。
早期に発見して生活習慣の改善など適切な治療を続ければ、深刻な状態に進行させず楽にコントロールしていくことができます。進行につれてコントロールが難しくなり、動脈硬化や合併症リスクが高くなってしまうため早めに受診するようおすすめしています。
糖尿病のタイプ
糖尿病は、1型・2型に分けられ、全体の約95%が2型とされています。
1型
膵臓の膵β細胞が破壊されてインスリンを分泌できないため、上がってしまった血糖値を下げられない状態です。主な症状はのどの渇きと多飲・多尿で、生活習慣とは関係なく発症し、若年層の発症が多い傾向があります。インスリンを補充する治療によって適切な血糖値のコントロールができるようになれば、以前とほとんど変わらない生活を送ることもできます。また、重症の場合には、膵臓移植や、同時に腎臓移植などを行うこともあります。
2型
過食、運動不足、肥満などの生活習慣に、遺伝的要因、ストレス、加齢、他の病気などが関与して発症します。妊娠中の糖代謝異常によって起こることもあります。高血圧や脂質異常症、肥満などをともなうケースが多く、その場合には動脈硬化が進みやすいため、血糖・血圧・血中脂質・体重などをしっかりコントロールする必要があります。
糖尿病の合併症
高血糖が毛細血管に大きなダメージを蓄積させて、様々な細小血管合併症を起こすことがあります。糖尿病の合併症として特に発症頻度が高いのは、網膜症・腎症・神経障害です。失明・腎不全による人工透析、壊疽による足の切断など深刻な状態につながる可能性があります。動脈硬化による脳梗塞や心筋梗塞だけでなく、こうした合併症を防ぐためにも生活習慣改善と適切な治療を続けて血糖値をコントロールしていきましょう。
糖尿病の治療
生活習慣の改善は、血糖値のコントロールだけでなく、適切な血圧・血中脂質・体重を保つためにも重要です。バランスの取れた食事を1日3回規則的にとり、習慣的に軽い運動を行いましょう。特に早期であれば軽い生活習慣の改善だけで十分な効果を得られることも珍しくありません。こうした生活習慣改善は厳格に行っても続かなければ意味がありません。当院では、できるだけ無理せずに続けていけるよう、親身にアドバイスをしていますのでご相談ください。なお、生活習慣の改善だけでは効果が得られない場合には、内服薬の処方やインスリン注射などの治療も行います。
高血圧
血圧は、血液によってかかる血管壁への圧力です。心臓が収縮すると血液は強く押し出されて血圧が高くなりますが、これが収縮期血圧です。心臓が拡張した際には血圧が低くなり、これが拡張期血圧です。高血圧は、収縮期が140mmHg以上、拡張期が90mmHg以上とされています。血圧はちょっとしたことで変動するため1回血圧を測ってこの数値を超えたら高血圧というわけではありませんが、高い数値が出たら診察を受けることが重要です。
高血圧が続くと血管に大きな負担をかけ、動脈硬化の進行に関わります。動脈硬化進行により心筋梗塞や脳梗塞、そして狭心症や腎臓病を発症するリスクが高くなります。高血圧は脳出血の最大のリスク要因とされています。血圧が高めの場合には、早めに受診して適切な治療を続けましょう。
高血圧の原因
生活習慣病の高血圧は、過剰な塩分摂取・喫煙・飲酒・運動不足・ストレスといった生活習慣に遺伝的要因などが関わって発症していると考えられています。はっきりとした原因があって高血圧になるのは他の疾患や薬の副作用として高血圧の症状が現れている2次性高血圧です。
高血圧の治療
減塩(1日6g未満)、適正体重(BMI25未満)を保つ、適度な運動の習慣化が不可欠です。続けられなければ意味がありませんので、当院では無理のない範囲で続けられるよう患者様と相談し、具体的なアドバイスを心がけています。数値があまり悪くなければ軽い生活習慣の改善だけで十分な効果を得られることもよくあります。生活習慣の改善だけでは効果が得られない場合には薬の処方も行います。様々なタイプの薬剤がありますので、患者様のライフスタイルなどにきめ細かく合わせた処方を心がけています。
なお、血圧計を購入して家庭でもこまめに血圧を計測して記録することをお勧めしています。
脂質異常症
コレステロールや中性脂肪は、細胞膜やホルモン、胆汁酸などを作る役割を担っていますが、脂質が過剰になってしまうと動脈硬化や血管の狭窄・閉塞を起こしやすくなります。悪玉のLDLコレステロールや中性脂肪のトリグリセライドが過剰な高脂血症だけでなく、善玉のHDLコレステロールが少ない状態も加えて脂質異常症と呼ばれています。
脂質異常症は自覚症状なく進行するため、健康診断などで指摘されたら早めに受診して適切な治療を開始する必要があります。また、改善しても実感しにくいため、定期的に検査を受けて状態をキープしましょう。
脂質異常症の治療
食事療法や運動療法といった生活習慣の改善を行いますが、高LDLコレステロール血症・高トリグリセライド血症・低HDLコレステロール血症というタイプごとにポイントになる生活習慣改善の内容が変わってきます。定期的に診察を受けてしっかり治療を続けましょう。
高LDLコレステロール血症では、動物性脂肪を控える食生活が重要になります。高トリグリセライド血症の場合は、摂取カロリーをしっかり守る必要があり、飲酒はできるだけ控えてください。低HDLコレステロール血症では、適正体重をキープすることを心がけます。生活習慣の改善では十分な効果を得られない場合には薬物療法も必要になります。
高尿酸血症(痛風)
血中の尿酸値が高い状態が高尿酸血症で、過剰な尿酸は鋭い針状の結晶になって足の親指をはじめとした関節にたまります。この尿酸結晶によって炎症を起こし、激しい痛みを生じているのが痛風発作です。尿酸値が高くても痛風発作を起こさない場合もありますが、尿酸値が高い状態が続くと腎臓にも大きなダメージが蓄積されます。尿酸値が高いと指摘されたら、早めに受診しましょう。
高尿酸血症の治療
食事療法と運動療法で適正体重を保ちますが、激しい運動は痛風発作のきっかけになることがあります。必ず医師に相談してから適切な生活習慣の改善を行うようにしてください。尿酸値が高い場合には、尿酸の生成抑制・尿酸の排泄促進の効果がある薬剤を使った薬物療法を行います。ただし、急激に尿酸値を下げてしまうと痛風発作を起こしやすいため、少しずつコントロールしていきます。また、尿酸値が十分に下がっても血中の尿酸結晶が溶けるまでには時間がかかりますので、しっかり治療を続けていきましょう。